それだけ ~先生が好き~
「お母さん・・・大丈夫・・・?あのね・・・」
あまりに静かで、声が響いて・・・
足が震える。
今にも崩れ落ちそうだけど、ここで頑張らないと一生後悔する。
頑張るんだ。
「私ね・・・ずっとね、嫌だったんだよ。お父さんの悪口言ってるの聞いたり、お父さんと言い合いするの見てるの・・・嫌だったんだよ」
言葉がこぼれ落ちるようだった。
止まらなくなっていく。
いつも我慢していた気持ち。
「しょうがない」で諦めてた気持ち。
先生が、開いてくれた。
もう開いたドアを自分から閉めたりしない。
「ずっと言えなかったけど、本当は苦しかったんだよ。お母さんが全部悪いんじゃない・・・けど、このままじゃ嫌だもん」
涙がいつの間にか頬を伝う。
今はそんなことも気にならない。
お母さんが、顔をゆっくり上げた。
「・・・そう・・・悪かったわね・・・」
お母さんの言葉が私の胸に突き刺さるように届いた。
謝ってほしいんじゃない。
もう一度、ちゃんと「家族」になりたい。