それだけ ~先生が好き~
「謝ってほしいんじゃないよ・・・!!やり直したいの」
お母さんの目をまっすぐ見る。
お母さんはどこか遠くを見つめているような気がする。
「やり直す・・・?何を、どうやり直すの・・・」
ぼそぼそと呟くように弱い声。
もっと早くこうすればよかったんだ。
そうすれば・・・
だめ
いまさら振り返ったってしょうがない。
「完璧じゃなくていいの。朝すれ違ったら、おはよう言ってくれるだけでいいの。帰ってきたら、おかえりなさいって言ってほしいの。・・・それだけでよかったの・・・」
お母さんが、やっとこっちを見た。
お母さんの目には、キラキラした涙がいっぱいたまってた。
きっと、お母さんもそう思ってたのかもしれない。
もう一度、「家族」になりたかったのかもしれない。
その気持ちを押し殺してしまったんだ。
「・・・やり直せる・・・の・・・かな・・・」
私の目を見て話してくれるなんて、何年ぶりだろう。
私は思わずお母さんに抱きついた。