それだけ ~先生が好き~

職員室へ帰っていく先生に小声で「頑張って」を呟いた。

聞こえるはずのない小さい声のはずなのに、先生は振り向いて手を振ってくれた。


今日は一日・・・にやけまくりそうです。



教室に戻る途中、少しずつ人が来ていた。


「お、今井!お前昨日メール途中でやめたろ?寝たんか?」

城田と数人の男子が私に近寄る。

「あ・・・ごめん!歯磨きしてそのまま寝ちゃったんだ」

私がにやけながらそう言うと、城田は何かに気づいたのか、他の男子達に耳打ちして私を廊下の端に連れて行った。



「なーに、にやけてんだよぉ!なんかあったんだろ~。松戸と。教えろ!」



泣きそうになった。



城田がここまで私を思っていてくれたことが、嬉しい。



私だったら・・・言えないよ。



例え「好きだった」って過去のことだとしても、ついこの間のこと。



本心からそんなこと言えない。



城田・・・。



今度は泣きそうになる私の顔を見て、城田はぎょっとした。


「え・・・おい!?どうした?あぁ??」


必死になる城田が面白くて、思わず笑うと、


「なんだよ・・・!まったく」

「ごめんごめん・・・ありがとうね。うん、いいことあったよ!」

「そっか!話したくなったらいつでも言えよぉ」




神様が、何年分のシアワセを一気に運んでくれたかのようだった。

こんなに笑える。

シアワセだって思える。



どうか、壊れないで。





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