それだけ ~先生が好き~


教室の中は、太陽の光が差していて明るくて温かい。



先生が教室のドアを静かに閉める。


いつだか私が「ドアを閉めるときの大きい音が怖い」と言ったのを、気にしていてくれているみたい。


目の前に座った先生が、私を見つめて


「昨日は、本当に心配だったんだぞ。あんな顔して学校に戻ってくるから。今井のこと気になって眠れなかったんだから・・・」


笑いながら、そう言った。


私のこと・・・考えてたの??


今日は私が先生のことを考えすぎて眠れないよ・・・。

いつものことだけど。



「ごめんなさい・・・昨日は。でもね、ちゃんと話できたよ。先生のおかげなの」



私は昨日の一部始終を話した。


お母さんが「やり直せるかな」って、希望を示してくれたこと。

二人で抱き合って泣いたこと。

お父さんが帰ってきたら、三人で「ごめんなさい」を言い合ったこと。

みんなが照れくさそうに笑ったこと。

「おやすみなさい」を言い合ったこと。

朝、お母さんの作ったごはんを食べたこと。



全部、きっと先生がいなかったら実現しなかった。


諦めてた。


先生が話を聞いてくれて、わかってくれて、背中を押してくれたから。


大げさなんかじゃないよ。



先生がいなかったら、今の私は本当の私じゃなかった。



まるで人形のような、機械のような、ニセモノの笑顔しか作れなかったよ。



あの日から、始まった。



動き出した。




先生が話を聞いてくれたあの日から・・・。





本当の「私」が動き始めたんだよ。





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