それだけ ~先生が好き~


誰も帰っていない、真っ暗な家。


いつの間にか陽が落ちていた。


先生と話していたときは、あんなにも明るくきれいな夕日が差していたのに。


今はこんなに真っ暗。



電気をつけるのも面倒。



そのまま、階段をのぼる。




「・・・あっ」




ドタッ




階段につまづいて転んだ。



真っ暗で足元が見えなかったから、踏み外してしまったみたい。



座り込んだまま目を閉じたら、先生が浮かんだ。




『大丈夫か?張り切りすぎだな~』



転びそうになった私を受け止めてくれた力強い腕は、今はない。



先生




『俺でよければ話してくれよ』



『そんなに辛いんなら、気づいて欲しいよな』



『お前のよくないところは、考えすぎるとこ!』




『お前が悲しむだろ?』



『よく頑張ったな』




ごめんね



優しい先生しか浮かんでこない。


ずっと、辛かったよね。



私を好きだということすら、辛かったのかもしれない。



先生




ごめんね



泣いてばかりで、ごめんね




< 139 / 522 >

この作品をシェア

pagetop