それだけ ~先生が好き~


「今日から見ての通り、柔道に入ります。去年もやったと思いますが、今年からは投げ技もやっていきます。くれぐれも怪我には気をつけてください」



畳の上で正座をして先生の話を聞く。


足が痛い。


正座なんて慣れないもん。


でも先生を見てると痛みなんて吹っ飛ぶね。



「じゃぁさっそく、柔道着を着てください。着方、覚えてる?」


柔道着・・・確か去年は帯が難しくて結べなかった。

やるたびにどこかおかしくて、すぐほどけちゃう。


今年こそ・・・



「ゆき、それ逆じゃない・・・?」


さっそく萌に突っ込まれる。


「あぁ、本当だ、なんで??」


私の選んだ柔道着は帯が長くて結びにくい。


うぅ・・・


みんな苦戦しているようで、教えてもらえない。


出来ないよ。


どこがおかしいのかな・・・




「今井、おいで」



先生が私を呼んだ。


なんで?



先生に呼ばれるがままに一番前に出て、先生と向き合った。


ぐちゃぐちゃの柔道着のまま。



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