それだけ ~先生が好き~



先生の話は、亡くなった彼女のこと。



誰にも話したことがなかったそうだ。


私に話してくれたことが嬉しい。


だけど、喜んでなんていられない。


先生の心の傷は・・・深くて、一生癒えない。


それを改めて感じた。






彼女と出会ったのは、大学生のとき。


野球サークルの飲み会で隣に座ってから仲良くなった。


彼女はマネージャーで、『翔』って名前。


男みたいで嫌だ、と照れながら言った彼女を・・・先生は愛しく思った。

その飲み会以来、サークルで会う度に惹かれていったんだって。


出会って一ヶ月、先生から告白した。


彼女も泣いて喜んだんだ・・・と言ったときの先生がとても切なく見えた。


それからは順調で、先生が教師になる夢もかなって・・・。



結婚



しようって、約束してた。



二人で暮らしたいっていうのは二人でずっと思っていたこと。



先生が教師になる夢がかなったらって決めていた。



その日に・・・指輪を買った。



二人で薬指につけてシアワセを実感したんだ。




そう言った後の先生の瞳が涙で濡れているのがはっきりわかった。




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