それだけ ~先生が好き~
下校する人もまばらになってきた廊下。
先生はいつものように腕組みをして、壁にもたれた。
「なんだよぉ、二人して俺に?珍しいなぁ」
ひげを触りながら私達の顔を交互に見る先生は、私を見てにやついた。
「あぁ!!今、にやついた・・・!え、何、そういう関係?」
ドキッとした。
そういえば、まだ誰にも言ってない。
先生と・・・両思いになったこと。
手に汗をかいて、どうしようと思っていたら・・・。
「ばぁか!んなわけねーだろぉ?何、城田もみつめてほしい??」
なんて、笑ってごまかす先生に救われた。
ほっとして、冷静さを取り戻した。
「いらねぇよ!!それよりさ、天井の穴さ・・・」
「あ!!まさか、またお前かぁ?」
「ちげーよ!何で俺なんだよ!!」
先生は赤いジャージのポケットに左手を突っ込んで、右手で城田を指差した。
「疑うのも無理ねーよ、なぁ?こいつ、今まで何回窓ガラスわって壁に穴あけたんだよ」
先生が無口になってた私に話しかけてくれた。
「いいから!!もう過去のことだから!」
城田は先生の指を腕ではらった。
「先生、あのね、話したいことは・・・水野さんのことなんだ」
先生は急に真面目な顔になって、私の目を見た。