それだけ ~先生が好き~
「おはようございます・・・」
5組なんてあんまり来ない。
水野さんはすぐに見つけられた。
机の前まで来た私に、不思議そうな目を向ける。
「あの、私・・・6組の今井ゆきっていうんですけど」
そう言った瞬間、驚いたように目を見開いた。
そのまま、「来て」と言われるがままについていった。
廊下の空気は緊張してる私を冷静にさせるほど冷たい。
「・・・ありがとう」
水野さんは、うつむいて確かにそう言った。
「私の・・・こと、心配してるって・・・松戸先生言ってたから」
壁にもたれる水野さんは、泣いているように見えた。
肩が震えてた。
「ごめんなさ・・・い。迷惑しかかけられないの・・・ばかだから」
「私は迷惑なんかじゃないよ。水野さんがもし辛い思いしてるんだったら、私は力になりたい」
思ったことがすらすらと出てきた。
顔を少し上げて、目がはじめて合った。
黒くて大きくて・・・綺麗な目。
そこに流れる、光る涙。