それだけ ~先生が好き~


相談室までの道のりは、思い出で溢れてた。



このまがり角で先生にぶつかったっけ。


あ、ここの壁の落書き、先生と二人で必死に消したんだ。


ここで、私がごみを拾ったら、先生ほめてくれた。


あの保健室で、先生が抱きしめてくれた。


体育館でのバレーボールで、私・・・顔に思いっきりボールぶつけて、先生に大丈夫かって言ってもらったな。




何でこんなに鮮明に思い出せるんだろう。



先生はもう忘れたことばかりかもしれない。



私はきっと忘れない。


ううん、絶対に・・・。



相談室の前には、もう先生がいた。


右腕を上げて、おいでおいでってしてる。


いつもの私なら走りよって行くのに・・・



ゆっくりゆっくり歩く。


少しずつ先生に近づいてく。




「遅い!俺何分待ったと思ってるんだ?」


あんまり待ってないはずなのに・・・


そうやって元気のない私を笑わせようとするんだ。


そうゆうところが好き。



相談室の鍵を開ける。




いつもと同じ先生のしぐさひとつひとつをじっと見つめる。







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