それだけ ~先生が好き~
片思い
時計の針の音だけが聞こえる。
涙でぼやけた視界にうつる、ぼんやりとした先生。
これでいい。
こうするしかない。
「・・・何言ってんだ?一緒に、いられないって・・・」
先生の声が震えてる気がする。
笑顔でさよなら言うつもりだったけど、そんなの無理な話だった。
涙は止まる気配がない。
私の手を包んでくれている先生の手が、冷たい。
「何があったんだ?・・・好きなんだろ?俺だって、お前が・・・」
「先生は先生だもん。みんなの先生だもん。私だけの・・・先生じゃない」
先生の言葉を遮るように声を振り絞った。
「私だってそばにいたい。だけど・・・このままじゃ・・・」
晴香が、と言いかけてはっとした。
先生は少しの私の言葉も聞き逃さない。
「・・・晴香?水野のことか?水野と何かあったのか?」
悲しそうな目。
私はこれ以上何も言えない。
晴香の気持ちをここで伝えることはできない。