それだけ ~先生が好き~


「せんせ~!おはよ!!今日スーツなんだ、かっこいいね!」



晴香は笑顔で信号を渡っていった。


その後ろを下を向いて歩く。


先生はポケットに手を入れて、晴香と話してる。


とてもじゃないけど、近寄ることなんて出来なかった。


「おはよ。かっこいい人は何着ても似合うんです~!あ、頑張れよ、伴奏」


遠くで見守る私は、胸が苦しくて、しゃがみこんで泣きたかった。


かすかに聞こえる二人の話し声を、ただ聞く。



本当は・・・近くに行って、三人で話をしたいよ。




照れる晴香をからかってあげたい。



それで、いきなり二人っきりにさせてあげたりだって・・・。




出来ない





ごめんね、晴香


ごめんね、先生・・・




晴香の笑顔と太陽が重なって眩しいよ。



走っていけば、すぐそこにいるのに。


会えるのに。


話せるのに。



動けない。





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