それだけ ~先生が好き~


壁にもたれて待つ私なんか、もう忘れてしまったかのように晴香は先生と話してる。


先に行きたい。


この後・・・晴香の報告を聞いてホールまで歩ける自信はない。


言ってしまおうか。



先生が、私を見るかもしれない。



・・・大丈夫。

一瞬だよ、そんなの。



決心して、信号の下にいる晴香までダッシュした。



「晴香ぁ!先行ってるね・・・?」



晴香は、私が二人きりにしようとしていると思ったのか、笑顔で頷いた。


それでもいいや。



晴香から走り去ろうとする私は、一度も先生を見ない。


見れるわけない。



「じゃあ、あとでね!」

強がって、その場を離れる。



先生が目の前にいることがこんなにも苦しいとは思わなかった。


ホールまで、また走る。



先生、どう思った?


一度も先生の方を見ない私に、あきれた?


もう好きなんかじゃない?




本当はね、一瞬だけ聞こえた。



今井って、呼ぼうとしてたんだ。



それがわかってたから、その言葉を遮ったんだよ。




先生は私を嫌いになっていいんだよ




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