それだけ ~先生が好き~



歌を集中して聴けない。



晴香は今シアワセな気持ちでいるんだろうな。


遠くの席に座って歌を聴いている先生の後ろ姿が見える。

隣に座っている先生のクラスの男子がうらやましい。


大きな手で拍手をする先生の隣に行きたい。


本当は・・・いつだってそうだよ。

いつだって隣にいたいよ。



私は結局、自分に素直になれないだけなのかな。


晴香は自分に素直になれた。

だから・・・今こうして先生を好きだと堂々と想えてるんだ。


私は・・・


私は、うそつきだ。



自分を守るためなら、どんなうそだってつく。


弱虫なんだ。



そのせいで、先生はどれだけ傷ついたんだろう。



ちゃんと言えばよかった。


理由を伝えれば、先生はわかってくれたはず。


それなのに


わがままな私は、別れの理由すら伝えず別れた。




そう思うと、苦しくて泣き出したくなる。




本当は、別れたくなかったよ。


本当は、ずっとそばにいたかったよ。


いっぱい支えてもらった分、私が先生を支えたかったよ。


隣で笑っててほしかったよ。




本当の気持ち、伝えたかったよ。



ステージを照らすオレンジのライトが眩しい。



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