それだけ ~先生が好き~


私のクラスの歌はやけに明るくて、今の私には歌うだけで疲れる。


発表の順は、くじ引き。


先生のクラスの後になったんだ。


舞台裏でみんな緊張してる。


萌は深呼吸を繰り返す城田を見て笑いをこらえてる。


「やっぱ緊張するな・・・やべ、間違えそう」

「大丈夫だよ、落ち着いてやれば・・・」


落ち着いてやれば出来るよ、と言おうとした私の声は止まった。




舞台裏の・・・ステージに向かう通路に先生が立ってたんだ。


グレーの背中を見つけてしまった。



自分のクラスの歌を笑顔で聴いてる。


その後ろ姿から目が離せない。



もう何日まともに顔を見ていないだろう。



楽しみだったんだ、毎日先生の顔を見るの。



もう・・・見つめることは出来ないけど。



何度言い聞かせたって、私は理解出来てない。


先生の後ろ姿ばかり見てたってしょうがないよ。




拍手の音が聞こえる。


先生のクラスの発表が終わったんだ。

大きな手で満足そうに拍手する先生。


次は、私たちの番。



ステージに向かう途中、先生とすれ違った。


肩がぶつかりそうなくらい近くて・・・


息を止めて、少し足を速めた。



ステージのライトは・・・こんなに汚い私を構わず照らす。



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