それだけ ~先生が好き~


明るいピアノの音色に合わせて、弾むようなリズムの歌。


先生は「明るくていいよな。ひそかに狙ってたんだけど」って言ってたな。


歌っていても、先生のことばかり考えてしまう。

ばかだなぁ・・・。



歌い終わって、ほっとして退場をする私たちと入れ替えに、5組が舞台裏へ向かう。

5組は・・・晴香が伴奏やるんだ。

頑張ってほしいな。


離れ離れになった晴香のお父さんにほめてもらったことがあるんだって。


昔、まだ一緒に暮らしていた頃・・・お父さんの誕生日に弾いた「Happy Birthday」。


それが嬉しくて、ピアノだけはずっと続けていたんだ、と照れて話した晴香を思い出す。




頑張れ。




晴香なら・・・出来るよ。




緊張しているのか、小走りで舞台裏へ向かう晴香の後ろ姿。




先生、ちゃんと見ててあげてね。




それで・・・終わったら、ほめてあげてね。



『よく頑張ったなぁ』って。



私なんかが言うより、絶対嬉しいはずだから。



晴香きっともっとピアノを好きになるかもしれないね。





自分の欲を押し込めて、晴香を応援する。







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