それだけ ~先生が好き~



「ゆきー!!どうだった??緊張した・・・失敗してなかった?」



お昼の休憩時間に、走ってやって来た晴香がかわいい。


「うん、すごかったよぉ!!やばいね、晴香うますぎ!」


これは本当に素直な感想。

真剣な横顔がすごくかっこよかった。


「そう?よかった・・・先生見てたかなぁ」


手に汗をかいてるのがわかる。

いつまでうじうじしているんだろう。

応援するって・・・決めたのに。



「あ・・・先生も、めちゃくちゃ拍手してたよ!後ろからだからよく見えなかったけど・・・」



こんなあいまいな言葉でも、晴香は顔を真っ赤にして喜んでる。


晴香は嬉しそうにお弁当を食べてる。

私は食べる気になれず、お弁当の包みを開けない。


せっかくお母さんが作ってくれたのになぁ・・・。


前までは・・・学校でパンを注文するか、コンビニで買ってお昼に食べてた。



いつの間にか、お母さんがお弁当を作るのが普通になってたんだ。



・・・先生が背中を押してくれたおかげだった。


ちゃんと食べよう。


今を当たり前に思っちゃだめ。


今を・・・大事にしなきゃ。




みんなより遅れてお弁当の包みを開いていると、パシャッと写真を撮る音がした。




・・・誰?


そう思って振り向いた、私と晴香。




振り向かなければよかった。


一瞬で後悔したけど、今更向き直るのも不自然だ。




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