それだけ ~先生が好き~






先生が、カメラを持って立ってた。






涙が今にもこぼれ落ちそうで、下を向く。



少しずつ・・・できるだけ自然に顔を逸らした。



何で・・・写真を撮ったんだろう。



あぁ、晴香を撮ってたんだ。

晴香や萌や城田を撮ってたんだ。



私なんか相手にしてないよね。



「水野すごかったなぁ、ピアノ。練習してたもんな。よかったぞ!」



その言葉に笑顔を向ける晴香は・・・誰が見たって素直でかわいい。


私は・・・後ろを向いて、お弁当を包みなおした。



やっぱり食べれない。


胸が苦しくて・・・泣き出したい。




「先生ちゃんと見ててくれたんだ。失敗してなかったみたいだからよかった!あ、先生写真もっと撮ってよ!」



晴香の純粋な気持ちが、私を追い込んでく。



「おぉ、撮ってやるよ」


快く引き受けた先生に、絶望感すら覚えた私。





やめて


お願いだから



そんな残酷なことしないで




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