それだけ ~先生が好き~



晴香にとって、嬉しいことならなんでもしたい。



だから・・・やらなきゃ。


写真撮るぐらい、なんでもないよ。


少し驚いている先生が横目に映る。



本当はうらやましくてしかたがないくせに。



「あ・・・カメラ。ここシャッターだから・・・」


わかりました、と静かに返事を返す。

先生から渡されたカメラ。


一度も目を合わせない私は、最高にかわいくない。




「・・・撮ります」


機械みたいに、何の感情も込めず写真を撮った。



晴香はこんな私にも気づかず、先生の服の裾をつまんで喜んでる。


だけど、震えた手でカメラを返す私は笑うことなんて出来ない。




いつまで自分にウソをつき続けるんだろう。



こんな自分、大っ嫌い。




「・・・今井、どうした?」



懐かしい、私の名前を呼ぶ愛しい声。


うつむいたままカメラを返した。



笑顔の晴香と、不安そうな顔をしている先生を見るのが辛い。



「あ、私・・・用事あるから」


その場から荷物を持って離れようとする。


そんなウソ、見破られると思ってた。



・・・でも晴香は気づかず、いってらっしゃいを言った。



< 232 / 522 >

この作品をシェア

pagetop