それだけ ~先生が好き~
晴香にとって、嬉しいことならなんでもしたい。
だから・・・やらなきゃ。
写真撮るぐらい、なんでもないよ。
少し驚いている先生が横目に映る。
本当はうらやましくてしかたがないくせに。
「あ・・・カメラ。ここシャッターだから・・・」
わかりました、と静かに返事を返す。
先生から渡されたカメラ。
一度も目を合わせない私は、最高にかわいくない。
「・・・撮ります」
機械みたいに、何の感情も込めず写真を撮った。
晴香はこんな私にも気づかず、先生の服の裾をつまんで喜んでる。
だけど、震えた手でカメラを返す私は笑うことなんて出来ない。
いつまで自分にウソをつき続けるんだろう。
こんな自分、大っ嫌い。
「・・・今井、どうした?」
懐かしい、私の名前を呼ぶ愛しい声。
うつむいたままカメラを返した。
笑顔の晴香と、不安そうな顔をしている先生を見るのが辛い。
「あ、私・・・用事あるから」
その場から荷物を持って離れようとする。
そんなウソ、見破られると思ってた。
・・・でも晴香は気づかず、いってらっしゃいを言った。