それだけ ~先生が好き~
夢
最悪な形で終わった合唱祭から・・・2週間たった。
晴香は合唱祭の日のことなんて何も聞いてこない。
晴香の口から出る先生の話は、どれも私にむけられたものではなく、晴香自身に言い聞かせているようにしか聞こえない。
だけど、城田や萌にはしこいほど問い詰められた。
『あのあと、先生全速力で追いかけてたんだよ。カメラ私に預けて』
『俺も行くっつったけど、止められた。俺のが足速いのに』
二人に迷惑をかけたことは、謝った。
でも誰もいないところまで逃げて泣いていた、なんて言えなかった。
何事もなく、ちゃんと帰ったと思ってくれてればいい。
合唱を楽しむ暇もなかった。
あれから先生と話すことは・・・ない。
授業のある日は保健室に行くか、ひたすら下を向いて過ごすかのどちらかだった。
そんな生活に慣れていく私に、抵抗していた心の中の本当の「私」はいつの間にか消えた。
廊下に歩いている先生を目で追ってしまうくせがなかなかなおってくれない。
本格的な冬を迎えるというのに、私はまだ進まない。
別れたあの日から止まってしまった。