それだけ ~先生が好き~
「合唱祭のとき・・・ごめんな。わかってたのに、どうしようもできなくて。お前が逃げた後、俺追いかけたんだぞ!」
「うん、聞いたよ。私も、先生が追いかけてくれてるのわかってた。だけど・・・怖くて・・・止まれなかったの」
あのときのことを思い出すと、胸が苦しくなる。
先生の必死な顔。
「本当はね、振り返って先生のとこ行きたかったんだよ」
ぎゅ~って力いっぱい抱きしめられる。
先生のダウンが顔にあたって、気持ちいい。
「午後の部始まっちゃうから戻っちゃったんだけど・・・戻りたくなかったなぁ。せっかくの今井と話せるチャンスだったから。お前、授業もあんまり出ないし、出ても下向いてるから・・・」
先生の気持ちを思うと、悲しい。
そんな気持ちにさせたんだ、私。
私だけが辛かったんじゃない。
先生だって、笑顔必死で作って頑張ってたんだ。
「わがままな別れ方したから、先生に嫌われたかと思ってた。目もあわせらんないし、忘れられちゃったかなって・・・」
先生の手が私のおでこをコツンってした。
「そんなわけねーだろぉ!!お前とすれ違うとき・・・一生懸命見ないようにしてたんだぞ!見ると気持ちが止まらなくなるから。まぁ、その後放心状態だったけど・・・」
その言葉がどれだけ私を泣かせるんだろう。
ごめんね
何も知らずに、自分だけが辛いんだと思ってた。
先生は私と同じくらい辛かったんだ。