それだけ ~先生が好き~



「砂浜で開会式をするので、3年7組から海に移動してください」



体育委員の大きい声が頭に響いて痛い。



だけど保健室で待ってるなんてやだ!!

砂浜で見学ぐらいしたい。



ぞろぞろ移動していくみんなに続いて、足を引きずりながら歩く。


歩道橋を上るだけで、体力を使い果たしてしまいそう。


「本当に平気?悪化するよ・・・」


「へーきへーき・・・」



明らかに平気じゃないけど、行きたいもん。


ごめんね萌。


わがままでごめんね。



歩道橋を下れば、もう砂浜。



開会式を進行する体育委員のメガホンの音量を調節する先生がぼんやり見える。



・・・何の話をしてんだか全然わかんないよ。



今は体育委員の生き生きした顔も、話も私には届かない。




「女子からスタートです!スタートラインに集まってください」




きゃーきゃー女の子が騒ぎ始めるのは、予想してたけど、こんなに頭に響くとは・・・。



頭を抱えていると、萌はジャージを脱いで出発準備を終えていた。


「じゃあ、行ってくるけど、だめになりそうになったら先生呼ぶんだよ!」



それだけ言い残して、萌はスタートラインに走っていった。



萌、ありがとう。




< 275 / 522 >

この作品をシェア

pagetop