それだけ ~先生が好き~


『バレンタインなんだよな、今日。俺が廊下歩くたびにさぁ、女子が紙袋隠すんだよ。俺だって鬼じゃないのに』



笑いながら、クッキーをポケットに入れる先生の目を見れない。


だけど、強がって聞いてみた。



『先生、いくつもらえた?』



『これだけ。一個だけだよ、今年』




私もあげればよかったって、後悔した。




懐かしい。



あの頃の私。




まだ一年も経っていないのに、遠い昔の話のように思う。




ていうか、城田そんなに人気だったんだ。



確かに学校で顔は広いみたい。



そんなことをぼーっと考えていたら、歓声があがった。







「キャーーーー!頑張ってーーーー!!!」







ゴール前に、いつの間にか人だかりが出来てる。



「あ、噂をすれば・・・」



萌は背伸びをして向こうを確認。



< 283 / 522 >

この作品をシェア

pagetop