それだけ ~先生が好き~
『バレンタインなんだよな、今日。俺が廊下歩くたびにさぁ、女子が紙袋隠すんだよ。俺だって鬼じゃないのに』
笑いながら、クッキーをポケットに入れる先生の目を見れない。
だけど、強がって聞いてみた。
『先生、いくつもらえた?』
『これだけ。一個だけだよ、今年』
私もあげればよかったって、後悔した。
懐かしい。
あの頃の私。
まだ一年も経っていないのに、遠い昔の話のように思う。
ていうか、城田そんなに人気だったんだ。
確かに学校で顔は広いみたい。
そんなことをぼーっと考えていたら、歓声があがった。
「キャーーーー!頑張ってーーーー!!!」
ゴール前に、いつの間にか人だかりが出来てる。
「あ、噂をすれば・・・」
萌は背伸びをして向こうを確認。