それだけ ~先生が好き~
3時過ぎに、家のチャイムがなった。
約束の時間より少し遅め。
部活が長引いたのかなぁ。
かばんに家の鍵を入れて、玄関に向かう。
お母さんもお父さんも、今日は遅いみたいだから。
ピンクのワンピースに白いニットコートをはおって、なれないヒールのパンプスを履く。
「は~い・・・」
ドアを開けると、家の前にとまってる車の中にスーツを着た先生がいた。
「遅くなってごめんな~」
初めて先生の車に乗った。
いつも学校に来るときはバイクだから、車の先生は新鮮だった。
助手席に乗れるなんて・・・。
小さなことに感動しながら、車の中をきょろきょろ見渡す。
「ん?何か珍しいもんでもある?」
あまりに夢中な私を見て、先生は笑う。
「ううん、先生が乗ってる車なんだな~って・・・」
「ははは、何年もこの車だよ」
運転する先生の横顔に見とれて、ぼーっとする。
こんなにシアワセでいいのかな。
ピンクのネクタイをした先生。
普段は出張の時ぐらいしか着ない、スーツ。
好きで好きでしょうがないよ。