それだけ ~先生が好き~


「その服、似合うな。お前らしいじゃん」


信号でとまって、ワンピースの裾をひらひらさせながら私を見る。


「本当!?あのね、これね、昨日お父さんがプレゼントしてくれたんだ!私、今日何着ていこうか迷ってたら、お父さんが部屋に来てね、くれたんだよ」


興奮して話す私を見て、先生は穏やかな笑顔になる。

いつものように、片手を頭にのせて、撫でてくれる。



「そっか。よかったな!昨日楽しかったか?」


「うん!!お母さんがケーキ切ってくれたんだけど、崩れちゃったんだよ。それで、三人で笑って食べて・・・、すごく・・・楽しかった・・・」



笑顔でいたはずの私から涙がこぼれる。



初めてだった。



あんなにシアワセな夜を過ごしたのは初めて。


1年前の私には想像できなかった。


こんな未来が来るなんて、思っても見なかった。



全部、先生と出会えたから。




背中を押してくれたから。


大丈夫だって、言ってくれたから。



泣き出したら止まらなくなりそうで、涙を必死で拭く。


せっかくの先生とのデートを、泣いて過ごしたくない。




だけど身体は正直で、先生の元で泣くのを願ってる。





涙が止まんない。







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