それだけ ~先生が好き~



「ここ、来たかったんだ・・・お前と」



先生が耳元で囁く度に、心臓は動きを加速させる。



「すごい綺麗だね!!初めてこんなに綺麗なの見た!!」



照れ隠しに、たくさんしゃべる。

先生は落ち着いているけど、私はしゃべっていないと爆発しそう。



小さいベンチに寄り添って座る。



「寒いなぁ、大丈夫か?」


そういいながら私にコートをかけてくれる。

私はかけてくれたコートの半分を先生の肩にかける。



「昔も・・・来たの?」



そう聞いた途端、先生の表情が動揺したように見えた。


私も・・・聞いてから気づいた。




きっと、昔の・・・彼女さんと来たんだろう。




先生は私を傷つけないように、言わなかったんだ。



傷つかないよ。


大丈夫だよ。



先生が過去に誰かを愛していた事実を消し去るなんて出来ないこと、わかってるよ。



何か言おうとするのに、ためらう先生はきっと世界一優しい。



私はベンチから立ち上がって、そこらじゅうを駆け回る。



「先生~!!学校、あっちのほうかなぁ」



クリスマスは、笑っていたい。


それはきっと先生も一緒だから。



さっきの話を打ち消すようはしゃぐ私を、先生はどう思ってる?





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