それだけ ~先生が好き~


先生から初めてもらったプレゼント。



何度も何度も左腕のブレスレットを見て嬉しくなる。


でも・・・



私なんにも用意してなかった。



先生はいらないよって言うんだろうけど。


あげたかったなぁ・・・。



「先生、欲しいものないの?」


「ないよ。お前いればな~んにもいらない」



両手を包み込むようにして温めてくれる。


私はあげたいのに・・・。


足をぶらぶらさせながら先生の肩に頭をのせる。



「我慢させてごめんな、辛かった?」


いつもの優しい笑顔。


私だって先生のその笑顔があれば、なにもいらないよ。



「・・・ちょっとだけ」



今まで我慢していたことがよみがえる。


片思いのように、先生を遠くから見つめていた。



遠くで誰かと仲良く話す先生を見るたび、少し切なくなった。



今先生と話しているのが私だったらいいのにって、何度も思った。



「先生は、先生だもんね・・・」



いつも自分に言い聞かせている言葉を、先生に言ってみる。


少し困ったような顔をして、「そうだなぁ・・・」って言った先生は、みんなが大好きな先生の顔だった。



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