それだけ ~先生が好き~



「うっしゃ、すっきりしたー!!俺まだ用事あるから、先帰れ!部活今日ないだろ?」



私の背中を押して、下駄箱に向かう。


「うん、今日はお休みだよ」


「気をつけてな、また明日~!!」


笑顔で手を振る城田に、私も今日一番の笑顔で手を振る。


腕の付け根が痛くなるまで、後ろを向いたまま手を振り続けた。



だんだん遠くなっていく学校。



城田は、今どんな気持ちでいるんだろう。



そう思うと・・・涙が溢れる。


城田はたくさん応援してくれた。

自分の気持ちを押し殺して、私の背中を押してくれた。



私はなんにも出来なかった。



気持ちにこたえて・・・あげられなかった。


それすらもいいよって笑ってくれる城田。



明日には、また笑っておはよう言えるかな。


なんにも出来ない私だけど。



先生のことしか・・・考えてなかった私だけど。



こうやってひとつずつ、学んでいくのかな。


傷つきながら、涙をこぼしながら、大人になるのかな。



それが成長というのなら、大人になるのは残酷だと思う。



だけど、悩み考えた結果を、今悔やんでも・・・いつか笑って思い出話にする日がくるんだ。



いやでも、過去になる。


それなら、後悔をするのも悪くないんじゃないかな・・・。



今しか出来ない後悔。


今しか感じられないこの気持ちを



精一杯感じて、涙を流して・・・




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