それだけ ~先生が好き~
夕方の教室だった。
あの日、俺はいつもの奴らといつもの場所でたまってて、帰る前に教室にかばんを取りに行こうと、教室へ向かった。
もうとっくに誰もいなくなっているであろうその教室に、ひとり窓の外を眺めてるやつがいた。
・・・今井?
まさか会えるなんて思っていなくて、テンションがあがった俺は・・・話しかけようとした。
そこで、気がついたんだ。
泣いてる・・・。
涙を静かに流して泣いてる。
窓の向こうには、野球部が活動してる。
・・・あ、松戸。
バットを持って、野球部のやつらに指導してる松戸が目に入った。
・・・そっか。
お前、こいつを見てたんだな。
いつもいつも、こいつを見ていたんだな。
体育の時の、あの視線。
いつも気になっていたけど。
今はっきりわかった。
こいつは俺のことなんか見ていなかった。