それだけ ~先生が好き~


うれしそうに微笑んで、ボールを力いっぱい打つ松戸を見てる。



・・・うれしいはずだろ。



好きなやつを見ていられるなんて。


じゃあ、なんで泣いてるんだよ。



他になにか悩みでもあるのか?


なんでそんなに悲しそうな顔なんだよ。



俺は何も知らない。



きっと・・・松戸には話しているんだろう。


何度か、二人でいるところを見たから。



そのときは必ず目が赤かった。




俺はやっぱり、何にも出来ない。




そう改めて感じると、悔しくてたまらない。



松戸にかなうわけがない。



大の大人にかなうほど・・・俺は大人じゃない。




ただの中学生。




見た目や言葉使いを大人ぶってる、中学生だ。



暑いはずの7月の夏休み間近の教室で、震えそうだった。



目の前にあいつがいるのに。



・・・気がつきもしねぇし。



おい、こっち見ろよ。


俺はお前が好きなんだって、知ってるだろ。


なら、少しぐらい・・・



期待ぐらいさせろよ。



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