それだけ ~先生が好き~
「俺、迷惑だなんて思ってねぇし。だから謝んなくていーの!」
優しく微笑んでくれる城田は、私のほっぺをつねった。
痛いけど、それ以上に伝わる優しさがあった。
「顔色悪いなぁ・・・戻ったら即、先生に言わなきゃな」
「ううん、平気なの。寝てないだけ。ここんとこ眠れなくって・・・」
「また、何か悩み事か?」
違う、と言えなかった。
城田の優しい目の奥には、私を見透かす強い意志がある。
黙り込んでしまった私の肩を叩いて、ため息をついた。
「俺、何にも知らないからよくわかんないけど、松戸知ってんだろ?あ、遠慮してるのか、お前のことだからな~」
「何で・・・わかんの?」
あんまりにも私の気持ちをそのまま読まれているものだから、恥ずかしくなった。
「俺がお前をどんだけ見てきたと思ってんだよ!そんぐらいお見通しです」
にやっと笑った城田の顔は、前よりずっと大人っぽかった。
ひげ・・・なんて、生えてるし。
本当に中学生?
髪も茶色から黒になって、大学生っぽい。
「甘えたいときは、甘えろよ。お前甘え下手だからな」
何気なく言われたその一言が、私の胸にしみこむ。
バスの前で城田は「何かあったらいつでも言えよ!」って言って、1組のバスへ走って言った。
泣き止んで、私の心は少し晴れた気がする。
城田の優しさ、いつも感じる。
きっと、今頃先生に報告をしているんだろうな。