それだけ ~先生が好き~


今日も先生は忙しそうに廊下を早足で歩く。


私の日焼けとは比べ物にならないぐらい、真っ黒になってる。



先生の視界に入らないように、邪魔をしないように過ごすことに決めた。


そうやって毎日が過ぎてく。


寂しいけど


ちゃんと先生は忙しくても私のこと考えててくれるから。



先生は絶対忘れはしないから。



いつになるかわからないけど、きっと話せる日は来る。


それまでの我慢だよ。




美咲が私の腕をつかんで揺らしながら、上の空の私を呼ぶ。



「また寝てんのかぁ~!ゆきー!!」


「あぁ、ごめんごめん!寝不足でさぁ」


机の上には分厚い本を開いてある。


「何その本・・・美咲本なんて読むの?」


「え~~!!何それ超失礼!!!読むに決まってんじゃん。ていうか、これ本じゃないし。進路だよ進路!!いろんな高校の説明が載ってるやつ」



進路?


きょとんとした私の髪を悠は適当に結ぶ。


「ぎゃはははは!!その顔!その髪型!!ベストマッチです、ゆきさん」


悠が笑うそばで私はまだ頭がはっきりしない。


しんろ・・・


進路・・・




考えたことなかった。




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