それだけ ~先生が好き~


「う~ん・・・なんていうか、うるさい・・・かな」


先生は真っ直ぐ萌の目を見ている。

萌はまた私の方を向く。


「うるさいかぁ・・・。俺体育担当だから、普段の教室の授業よく知らないけど、他の先生からうるさいって言うのは聞いてる。体育なんてうるさい授業だからな」


ちゃんとクラスのことも考えてるんだ。


忙しいのに、先生は本当にいろんなことを抱えてる。



「それはなかなか直りそうにないけど、注意はするよ。他に何か悩んだりしてない?」

「今のところは別に・・・ないです」


「何か悩んだら言ってくれれば、力になるからな」


先生は、そうやってひとりひとりを心配して、考えて・・・


ちゃんとみんなを愛してる。


自分のクラスがきっと大好きなんだろうな。



私はその中には・・・いないけど。



やっぱり先生は素敵な先生。




「お前の方は、今度また別に時間とってゆっくり話そうな」




少しうつむいていた私に、先生はにこって笑いかける。


え、今の私に言ったの?



「え・・・あ、はい、お願いします・・・」



急にそんなこと言われて、緊張しちゃった。



「ごめんな、すぐ話そうって言ったのに。会議ばっかで忙しくて・・・って、理由にならないよな。ごめん」



先生が忙しいことわかってたのに


先生がこんなに私のこと考えててくれたことは、知らなかった。



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