それだけ ~先生が好き~


先生は本当に全部聞いてくれた。


優しい笑顔で、ただ聞いていてくれた。


私から目を逸らさずにいてくれた。



涙があまりにも出る私に、ハンカチを貸してくれた。



そして・・・頭をなでてくれた。



もっと涙出ちゃうよ、先生。


鼻水、はんぱじゃないよ。



ありがとう、先生。



「そっか・・・お前、それずっとひとりで考え込んでたの?」


「うん・・・先生忙しそうだったから、言えなくて」


「お前のことだから、何あっても言いに来ないかもとは思ってたけどな。そんなにつらいこと・・・ひとりで考え込んでたらだめだぞ。お前には、俺がいるだろ?」



俺がいるだろ、だって。


どんだけかっこいいセリフ言ってんの、先生。



かっこいいけどさ。


すっごく、嬉しい。


嬉しくてたまらないよ。



「会議なんてすっぽかしてでも聞いてやるのにさ、我慢しちゃうんだもん、お前。俺の為だ、とか思ってたんだろ?」



私の考えてること、全部お見通しだ。


なんか恥ずかしい。



「でもな、これはお前が考え込んでも・・・はっきり言って、悲しくなるだけだよ。今更どうこう言ったってしょうがないけど。だからこれからはもう我慢するなよ」


「・・・はい」


よし、って言って私の髪をぐしゃぐしゃにする。


こんなに嬉しい怒られ方も、あるんだね。



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