それだけ ~先生が好き~


話し終えて・・・うつむいてため息をついた。


どうしていいのかわからない。


卒業式をこのまま迎えて

離れ離れになっても・・・しょうがないのかな。



もう戻れないのかな・・・




「そうだな~。勇気出せないのはわかるよ。俺も・・・そういことあったよ。城田がいっちばん荒れてたとき。選択授業で、あいつ、ひどかったもん」



城田・・・?


何が、あったんだろう。



「あいつ授業に遅れて入ってきて、しかもガム噛みながら。あんまり怒りたくなかったからさ、ガム出せってだけ言ったんだ。でもあいつも意地になって、出さないし・・・。このままじゃ授業出来ないから、俺教室飛び出してさぁ」




そんなこと・・・あったんだ。




「何で・・・飛び出したの?」


「ん?だって、あのままだったら殴ってやろうかと思ったから。職員室でコーヒー飲んで落ち着こうかなって」



そのときのことを思い出すように、先生は校庭を見つめてる。



「しばらくず~っとぎこちなかったよ。廊下ですれ違っても、何も話さなかったし。でも、俺が大人にならなきゃなって思って体育の授業中にちょっと来いって呼び出してさ」



先生は本当に懐かしそうに目を細めて・・・笑う。



「それで、俺から『仲直りしようか』って言ったんだ。そしたら、あいつも『おう、いいよ』って・・・。いつもどおりの関係には戻れたわけだよ」



「そっか・・・そんなことあったんだ」



先生もなかなかいい出せなくてぎこちなかったこともあるんだね。


なんか不思議。



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