それだけ ~先生が好き~
『今井ゆき』
「はい」
練習中もずっとそんなことが頭を駆け巡る。
そんなの考えたってしょうがないのに。
職員席に座る先生は背筋を伸ばしてこっちを見てる。
壇上から下りて、職員席に会釈をする私に、先生も会釈してくれた。
練習用の証書を先生に返さなければいけないらしく、先生はどっさり証書を返されてる。
私も先生に証書を返す。
たったそれだけのこと。
それがこんなに嬉しい。
先生の視界に入れるだけで嬉しい。
卒業式の練習で、何度も怒る先生の声も
もうあと何回?
切ないこの気持ち・・・
先生も感じるのかな。
大好きな人とのお別れを経験した先生は
そのときどんな気持ちだったのか、気になった。
もう二度と会えなくなってしまった、大好きな人・・・。