それだけ ~先生が好き~
「何、ひとりで外眺めてんだ?」
愛しい声。
いつの間にか隣でほおづえをついて一緒に窓の外を眺めていたのは、先生。
「うん、なんかもう卒業だなぁって」
「そうだなぁ・・・早いよな。寂しい?」
「寂しいよ!めちゃくちゃ・・・。だって新しい学校に行っても先生はいないんだよ」
正直な気持ちに、先生は優しく目を細めて・・・
力強い腕で私の頭を先生の身体にもたれさせる。
「そうだよな。俺だって4月から・・・新しい学年受けもつんだもんな」
「先生は、寂しいの?」
「そりゃ、寂しいよ。お前に学校じゃ会えないし、他の奴らとも会えなくなるだろ。お前らと一緒にこの学校に赴任してきて、3年間ずっとお前ら受け持ってきたんだから」
目をちらっとこっちに向けて微笑む。
今は私しか見えてないんだ・・・。
嬉しい。
「お前もいっぱい悩んで大変だっただろうけど、今振り返ってみるとなんか全部懐かしいだろ?水野とのことは、まだ解決できてないけど」
本当に、いろんなことがあったね。
この学校に入学する前と今とじゃ・・・
まったく違う自分。
先生を知らなかったら、きっと今の自分にはなれなかったはず。
こんなに悩んだり泣いたりしなかったね・・・。
たくさんのことを知って、いっぱい悩んだ。