それだけ ~先生が好き~
今日も職員玄関前に止まる、青いバイク。
来てるんだね。
少しでも顔、見れますように・・・。
髪がなんか気になる。
切ったばっかりだから・・・変かなぁ。
まぁ、今更後悔しても遅いけど・・・。
「おはようございまーす」
美術室には、もう数人の人が来てた。
窓から見える野球部は、外の水道の掃除をしてる。
きっと、先生の指示だろう。
いつも・・・先生はそういうことをさせてる。
掃除とか、片付けとか。
そのおかげで、そういうことが大事な事って、野球部のみんなが一番知ってる。
「ゆき、おはよう。今日ね、パステル画やろうと思って持ってきたんだ~」
萌は新品っぽいパステルの箱を見せた。
「パステル画?へ~・・・面白そうだね!」
そういう他愛のない会話をしながら、絵を描く。
時々、窓の外を眺めながら・・・。
あ、ミーティングはじまったぁ。
先生がどんどん野球部員で見えなくなる。
見えなくなっちゃった・・・
「ゆーきー?野球部見てないでお絵かきしましょうね~」
萌に言われて、顔が赤くなる。
「先生見てたでしょ~?田村は来てないし、会えないし」
「よく知ってるね・・・今日来てないこと。萌の方が見てるじゃん」
そういって、2人で笑いあった。
萌・・・萌は、先生がいい先生だって言っても、
『そうかなぁ・・・』
って首をかしげる。
でもみんな、先生のこと好きなんだよね。
先生の優しさとか・・・
ちゃんとみんなに伝わってるんだよね。