それだけ ~先生が好き~
抱き合ったまま、時間が流れる。
静かな空気と先生の腕に包まれる。
「俺、何言ってんだろうな。何もわかってない・・・お前のこと」
少し体を離して、見つめあう。
悲しそうな・・・先生の顔。
優しすぎる先生。
「先生・・・泣いたりして・・・ごめんね。先生悪くないよ・・・」
先生の目を見た。
何度見てもドキドキする目。
大きくて・・・きれいな目。
その目に今映っているのは、私。
笑って・・・先生。
いつもの笑顔で笑って。
私の気持ちが伝わったのか、優しい笑顔に変わった先生。
やっぱり、笑顔の先生が一番好き。
「わがまま言ってごめんなさい。ちゃんと帰るね」
ベッドからゆっくり立ち上がる。
足元が・・・ふらふらする。
「いいよ、俺送ってく。あ、バイクで来たから・・・歩きでだけどいい?」
先生の気遣い、すごく嬉しいんだよ。
先生と並んで、歩いて帰れるんだぁ。
もっともっと、熱が上がっちゃうかもしれない。
「じゃぁ、お願いします」
「了解!鞄、俺持つよ。歩けるか?」
「歩けるよぉ、そんなに重体じゃないってば!」
「なんだ・・・歩けなかったらおんぶして帰ろうかと思ってたのに」
「おんぶ?恥ずかしいよ・・・いつかしてね、おんぶは!」
笑いながら保健室を出た。
先生といるときは、本当の自分になれる気がする。
本当の笑顔で笑える気がする。
帰るときはいつも嫌だったのに、先生といっしょなら楽しみだよ。