† Lの呪縛 †
体を震わせ小さな子供の様に不安気な瞳。


だが色香を深く纏い、魅惑的でもある。


ダグラスはオリヴィアから目を離せなかった。


身体、そして心が痺れる感覚を覚えながらも、気付かないふりをした。


経験上この感覚が何なのか、よく知っているから。


今はレッドフォード伯爵家の当主であり、愛する妻、子供がいる。


感情如きに流される訳にはいかなかった。



「どんな身体だろうと、オリヴィアに変わりはないだろう?」

「っ……あり、がとう……」

「さぁ、おいで」



ダグラスが微笑み手を広げると、オリヴィアは戸惑いながらもノエルの腕の中を離れ、遠慮がちにダグラスの首に腕を回した。


ノエルとは違う安心感を与えてくれる存在。


温かく、しっかりしていて頼りになる……これが父親というものなのかと、オリヴィアは思った。


オリヴィアが腕に力を込めると、ダグラスは包み込む様に強く抱きしめた。


そんな二人を見ながら、ノエルはグッと奥歯を噛み締めた。


オリヴィアに触れる者は、父親と言えども男でしかなかった。


ノエルの中の独占欲は、留まる事なく増していく。


それでも想いのまま生きられないのは、理性が働いているからだろう。


そのジレンマは、ノエルを酷く苦しめる。





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