† Lの呪縛 †
「とにかく綺麗な子だった。 まるで人形みたいな子だよ」



人形の様に美しいと思った事は事実だが、人形の様に表情が変わらず人間味がないと思った事もまた事実。


だがそれはあえて口には出さなかった。


人見知りをしていただけかもしれないし、まだオリヴィアに会っていない両親に、わざわざよくない印象を与える必要もないと思ったからだ。



「お前が女性を綺麗だと褒めるのは珍しいな」

「そうかな?」

「そうよ、キティの事だって可愛いとは言うけれど、綺麗だとは言わないじゃない」



アレンはそれもそうかもしれないと思った。


だが、オリヴィアに可愛いという言葉は相応しくない様に思えた。



「彼女は特に瞳が綺麗だった。 多彩な瞳は光の角度によって変化するんだ。 まるで生ける宝石みたいな子だよ」



珍しく女性を絶賛する息子の言葉に、エドガーは目を輝かせた。


エドガーの反応に、妻であるヴァネッサは心中穏やかではなかった。


息子たちは知らないが、エドガーはどうしようもない程の女好きだ。


家庭円満な姿を崩したくないが為に、何度見て見ぬ振りをしたか分からない。


見て見ぬ振りをするだけではない。


時には暴露ない様にヴァネッサ自身が手を打つ事もある。


毎回エドガーを問い質してしまいたい衝動に駆られるが、それはヴァネッサのプライドが許さない。


その為、未だ女関係について触れた事は一度もない。


最近は歳のせいもあり落ちついてきてはいるが、万が一ダグラスの娘に手を出し世間に知れたとあっては、良き妻として、良き母としての面目丸潰れだ。





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