【短編】天然鈍感アホ男

「あたし協力するから、だから･･･千亜ちゃん頑張ろう？光くんに色々聞いてみるね！」


笑顔で言い終えた後、成美ちゃんは彼氏の元へ急ぎ足で向かっていった。
もう裕太は無理だよ。
あんなに鈍感な男、初めて見た。
もしかしてワザと？ワザとあたしの気持ちに気づかないフリしてるとか？
･･･それはないか。

諦めたくても諦めきれない。
自分でも馬鹿ぐらいに裕太の事、好きだから･･･

そんな中、事件は起きた。
それはその日の夜のことだ。
携帯の着信音が部屋に響き渡る。画面を見ると知らない番号。

誰だろう。
そう思ったけど、どこか見覚えのある番号だった。


「はい、もしもし？」


恐る恐る電話にでてみる。


『あ、千亜･･･？！』


電話越しに聞こえる声は確かに聞き覚えがある男の声。


「あの･･･誰？」


失礼かと思ったけど誰だか思い出せない。


『俺、光輝だけど･･･。』


あたしの頭の中が真っ白になる。
光輝･･･なんで今更、電話を･･･？


「何で？どうしたの？あたし話す事なんてない。」

『俺はある。お願い、俺たちヨリ戻そう？』


そう光輝は元カレ。
中学の時に初めて付き合った人。同じ高校を目指して二人とも合格したけれど光輝の浮気が発覚してあたしから別れを告げた。
そんな光輝に今更、話すことなんてない。


「変なこと言わないで、じゃあ。」


そう言って一方的に電話を切った。
あたしは明日が不安で仕方なかった。


「おはよ、成美ちゃん。」


朝学校に行き光輝の事を成美ちゃんに話した。
勿論のこと成美ちゃんは驚いてた。