【短編】天然鈍感アホ男
「やっぱりアタックあるのみだと思うよ?松本くんみたいに相当な鈍感の人だと強引なアタックが丁度良いんじゃないかな?」


その成美ちゃんのアドバイスに救われた気がした。


「そうよね!ありがと、成美ちゃん!」


頑張って好きだってこと気がつかせてやるんだからね。
席は隣だしアタックチャンスはたくさんある。
たくさん話しかけるんだから!


『おーい、お前等!今日は席替えするからな!』


勢いよく教室に入って来た担任の先生がハハッと笑いながら大きな声で言った。
さっきたくさん話しかけるって決めたばっかりなのに・・・。


「席替えとか久しぶりやな!また千亜と隣やったら、おもろいと思わへん?」


隣から笑顔で話しかけて来る裕太に胸が高鳴った。
あたし裕太と隣が良いな。

そう思いながら先生が作ったクジを順番に引きに行く。
あたしが引いたクジの番号は五番だった。


五番かぁ・・・。
あたしの隣って誰なんだろう。

あたしのクラスでは女子の隣が男子。
男子の隣は女子となっている。
先生が言うには女子同士や男子同士が隣になると授業に集中しなくてお話ばかりするから男女を隣同士にしたらしい。


『よし、皆クジ引いたな。じゃあ席順を黒板に書くからな。』


先生は大声をはりあげて黒板に書き出した。
全て書き終わった後、あたしは黒板に目を通し「五」という数字が書かれた席を探す。


「うそ、一番前だ・・・」


あたしの「五」が書かれた席は教卓の前。
一番前で最悪の席だった。


「千亜ちゃん、一番前だね!あたし松本くんと隣だから変えてあげるよ!」


爽やかに言う成美ちゃんに「ありがと!」とお礼を言って成美ちゃんのクジと変えてもらった。

成美ちゃんのクジは「九」で席は一番後ろの窓際。
その隣には裕太がもう机を運んでいた。
あたしも自分の机を運び裕太の机の横に並べた。
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