【短編】天然鈍感アホ男
「千亜、また俺の隣の席なんか?!やっぱ絆やな。」

「うん。裕太の隣で良かった・・・」


つい心の声が口に出てしまった。
いくら何でもこんな事言ったら裕太でも気づくよね?


「俺もや!ほなまた、よろしくなっ。」


ニカッと笑う裕太を見て気づいてないんだって思った。
だけど「俺もや!」ってあたしと隣で良かったって事だよね?
裕太は無意識に言ったのかもしれないけど、あたしには凄く大きな言葉なんだからね。

時は過ぎ昼休みになった。
窓際のあたしは授業中、暖かい太陽の光がポカポカと当たって気持ちよかった。季節はもう夏になろうとしている。

この席で授業してたら眠くなっちゃう。
だけど隣には好きな人がいるから寝顔なんて見せられないね。


「千亜ちゃん、お弁当食べよう!」


お弁当箱を嬉しそうに持ってきて机をくっつける成美ちゃん。


「うん、お腹減ったもんね。」


あたしの高校は給食はお弁当。お母さんは毎日作るのが大変だって言うから最近は自分で作っている。


「千亜ちゃん、自分で作ったの?」


お弁当の唐揚げを美味しそうに食べている成美ちゃん。
本当に成美ちゃんは可愛らしいなぁ。


「うん!朝早起きして作ったの!」


自分で作った玉子焼きをパクッと口に入れた。
とてもお母さんの様に「美味しい!」とは思えないけど自分で作った物だから食べれちゃう。


「千亜ちゃん、料理得意そうだもんね!」


ニコッと笑う成美ちゃんに「どこが?!」と聞きたくなった。


「全然・・・下手だよ、あたし」


そう言って少し焦げている玉子焼きの余りを成美ちゃんに見せた。


「焦げちゃってるけど、千亜ちゃんが頑張って作ったんだもん!絶対美味しいに決まってるよ!」


決して「下手だね」なんて言わない成美ちゃんに優しさと勇気を貰えた。「美味しいに決まってるよ!」なんて言われたら、凄く嬉しい。


「だからね千亜ちゃん!松本くんにお弁当作ってあげなよ!」
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