【短編】天然鈍感アホ男
「千亜の手料理なんやろ?楽しみや!」


またその笑顔であたしの心臓をドキドキさせる。
本当に、その笑顔は反則だよ。
あたしは昼休みになるのが不安と期待でいっぱいだった。


「千亜ちゃん、ようやく昼休みだね!今日は松本くんとお弁当食べるんだよね?あたしは光くんと食べるから千亜ちゃん、頑張ってね。」


ほんのりと顔を赤くしながらお弁当を二つ持っている成美ちゃんに「成美ちゃんも作ったんだね!」と言いった。


「うん、失敗しちゃったけどね。」


そう言うと成美ちゃんは照れ笑いをしていた。
そして成美ちゃんが彼氏の元へ言った後、隣にいる裕太にお弁当を差し出した。


「裕太、はいお弁当!」


ちゃんと笑顔で言えてたかな?


「おー千亜ありがと!なんなら一緒に食うか?」

「うん。」


良かった、裕太から言ってくれないと自分から「一緒に食べよう」なんて言えないからね。


「千亜、意外と料理上手なんやなぁ!美味いで!」


その笑った顔が嬉しくて、ちょっぴり恥ずかしくて・・・。
でも「美味い」って言ってもらえて嬉しかった。本当に作った甲斐があったって思った。
ハンバーグをパクッと食べて「俺、ハンバーグ大好きやねん」なんて言って次はエビフライ、スパゲッティと次々に食べていく裕太。

そんな姿を見て自然と笑顔になった。



「ホンマ、うまいなぁ・・・。」

「よかった、まずいって言われたらどうしようって思ってた」


そう言うと「言うわけないやろ」と言ってくれたのが凄く嬉しくて自分の昼ごはんの事をスッカリ忘れてきた。


「千亜は弁当ないんか?」


その一言で頭が真っ白になる。
そういえば今日は朝早く起きて裕太のお弁当しか作って来てない!


「忘れた・・・!」

「どうすんねん?!」


どうしよう。あたしって馬鹿だ。裕太のお弁当しか頭になくて忘れてた。


「ほら、購買部で何か買うて来い!」


そう言ってポケットから五百円玉を出してあたしにくれた。あたしは遠慮なく五百円玉を貰って購買部へと直行した。
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