晴れのち雨〜ANOTHER STORY〜
「正確にいうと、俺は一方的に見た。
だけど会っては無い。」
「どうして?」
「会っても意味無いやん。
向こうには幸せな家族もあんのに。」
ポケットから龍馬が煙草を出した。
「いや、話す事ぐれぇあるだろ?!
葵ちゃん、お前が死んだと思ったままかもしんねぇぞ?!」
「ええよ。
むしろ、死んだままの方が良い。」
「綺麗な思い出のまま残りてぇってか?」
トントンと灰皿に灰を落とした。
「そうやな。
死んだままの方が良い男やったって、葵の記憶に残りやすいかもしれへんし。」
あの日の綺麗な葵が、頭の中から出て行ってくれない。