でも、振り向かないで…
この人は天然なのか。それとも…私の心を知っていてそんな事を言うのか。
腹が立つのか、切なくなったのか、悲しくなったのか、もう自分でもよくわからなくなった。
好きだったのに。
あなたの事が、大好きだったのに。
それを伝える事さえも奪われた。
「…彼女、…出来て…良かったです…ね。」
ムスッとしながら言う私に、里中さんはとびきりの笑顔で「ありがとう」と言った。
「しょうちゃんはまだまだガキンチョって事だな。
まぁ、すぐに良い人現れるよ。」
奥のテーブルから里中さんを呼ぶ声がする。
里中さんがスッと席を立ち、去り際に笑顔を向けた。
「俺みたいのは、しょうちゃんには向かないよ。」