7人のメガネ男子にごちゅーい!
私が少しの間、雪斗に抱きついていると。

静かだった廊下が、ダダダッと地鳴りのような音が廊下に響くきだす。

「え?なに、なに?」

雪斗は、不安そうに呟くと、私を抱きかかえて、立ち上がらせると、廊下の端に避難した。

「……急にどうしたのかな?…もう、部活動の生徒いないよね……?」

私が、そう言うと同時に、数人の集団が、廊下を走っていった。

ブワッと強い風に、私は目を閉じる。少し経ってから開けると、その集団は十メートル先で止まっていた。

「あれ?生徒会の皆じゃない?」

と、雪斗が言うと、その集団は私達の元へ走ってきた。

「優花!心配したんだよ?!」

「なんで、急に出て行ったの?」

「ビックリしちゃったよー…。優花ちゃん、凄い血相で走って出て行くんだもん」

「一言位、何か言ったらどうだ!」

藍、蓮さん、直樹君、会長、が一斉に喋る。風真君と、要君は何も言わずに、ただ私の方に視線を向けていた。

「ご、ごめんなさい…。雪斗が、あまりにも遅いから心配になって…」

私は、四人の迫力が凄くて、思わず小さな声で答えてしまう。

「…もう、本当にビックリしたよ。でも、何も無いなら、良かったよ」

そう言って、藍はニコッと笑った。

「ごめんね?心配かけて…」

私が、謝ると、生徒会の皆が微笑んでくれた。

「大丈夫だよ。気にしないで?優花ちゃん。……でも、もう遅いから帰ろうか」

蓮さんは、私の頭と雪斗の頭を優しく撫でる。

「雪斗、優花ちゃんの家まで送ってあげてね?じゃあ、カバン持って早く学校から出ようか」

「もちろん!優花の事は、責任もって送るよ!」

雪斗は、両手の拳をよし!と、胸前に持っていく。

「ありがとう、雪斗」

「当たり前のことだよ!」

私が、お礼を言うとえへへ、と雪斗が笑った。

「…今から帰ったら、十時ちょっとになる…」

「あ!」

私が、ちょっと気を落としながら呟いていると、急に雪斗が叫ぶ。

「どうしたの?」

「…僕、お弁当、買ってきたのに…」

「…………………?」

え?手に持ってな…。

「…おばあさんにあげちゃったんだ…」

「…な、なんで?!」

私は、ビックリして目を見開く。

「おばあさん…、孫達にご飯買いに行っている途中で、転んじゃったらしくて…。グチャグチャになった弁当が可哀想だったから、あげちゃった」

「ど、どんだけ…優しいのさ…。お人好しすぎるよー……」

私は、少し苦笑いをこぼす。それに、つられて雪斗が、あはは…と、小さく笑った。

「まぁ…、もう帰るから良いんだけど…。さすが、雪斗だね。…私、さすがにそこまで、優しく出来ないと思うよ…」

私は、雪斗の凄すぎる優しさに、本当に感心してしまった。

「ごめん…」

「雪斗、謝ることじゃないよ」

「そうだよ。雪斗が、バカみたいに優しいってことなんか、僕達みんな知ってるんだから」

私が、言ってから藍が、多分雪斗を褒めた。

「バカは、余計だよー…、藍…」

藍の褒め言葉に、雪斗が苦笑いをする。

「本当のこと言っただけだよ」

「でも、まぁ…。そこが、雪斗の良いところだろ」

風真君が、そう言って雪斗の肩を抱く。雪斗は、風真君の直球の褒め言葉に雪斗が、照れ笑いをする。

「えへへ…」

「…って!照れてる場合じゃないよ!早く、帰らないと!もう、十時だよ!」

蓮さんが、慌てて私達の背中を階段のところまで押していく。

「やっべ!早く、帰るぞ!」

風真君は、走りながらそう言って、二階まで駆け上がっていった。

それに続くように、私達は階段を駆け上がっていく。

走りながら、私は笑ってしまう。

だって。

去年なんて、こんなに大変で忙しくて…楽しい夏休みを想像しなかったから。

…なんか、幸せだな…、皆と過ごす夏休みって。

「ふふっ……」

「幼児体型!笑ってねぇで、さっさとしろ!」

「ごめんなさい!」

来年も、今年みたいに、楽しい夏休みの始まりだといいな。
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