7人のメガネ男子にごちゅーい!
会長が、車のドアを開ける。それと、同時に皆が車から降りる。僕の後ろで、ゴンッと鈍い音が鳴る。

………優花が、降りる時に頭を車にぶつけてしまったようだ。泣きそうに、なってる。……そりゃあ、痛いよね…。

「優花、大丈夫?……どこぶつけた?」

僕が優花に駆け寄る。優花は、まだ痛いのかオデコを押さえたまま動かない。

「オデコ……ぶつけちゃった……」

大きい瞳に涙を浮かべる優花。……可愛い……。………じゃなくて。

「大丈夫?痛いね。オデコ、真っ赤になってるじゃん……」

僕は、優花のオデコを優しく触れる。ちょっと熱を持っている。相当、強くぶつけたんだな。

「………痛かった」

「優花ちゃん?藍?どうしたの?」

蓮が、僕達に駆け寄る。やっぱり、一番早くに、メンバーの一大事に気づく。

「優花が、車にオデコを思いっきり、ぶつけちゃったらしい」

「優花ちゃん、ちょっと見せて?」

蓮が、優しく優花の手をオデコから外して見る。本当に蓮って……格好良くて、優しくて。

………実は、僕は蓮にちょっと、憧れを抱いている。誰にでも優しくて、一番早くに異変に気づいて。僕に、無いものを蓮が全部持ってる。羨ましい。何度思った事か……。

「優花ちゃん。ちょっとだけ冷やそうか。俺の保冷剤貸すから」

蓮のバックから何故か保冷剤が出てきた。しかも、カッチコッチ。何が入ってるの?!って位に。蓮は、手際良く保冷剤をタオルに巻いて優花のオデコに保冷剤を当てる。

「ありがとうございます……」

優花の瞳からは、もう涙は無かった。蓮の素早い手当てのおかげだ。

「じゃあ、僕は優花の荷物を持つから。優花、ゆっくりホテルに行って荷物を置きに行こう?」

「ありがとう。藍。助かるよ」

優花が僕を見上げて目線を合わせて笑い掛けてくれた。僕は視線を合わすだけでも、心臓が激しく鳴る。優花にドキドキしてるのがバレないように視線をズラす。

「ぅっ……うん。大丈夫」

僕達は、ホテルに向かう。優花は、いつも通り歩く。だけど、優花は女の子だから歩幅が小さい。だから、男より歩くのが遅い。

生徒会委員は、普通に歩いているけど普段はこの何倍も速い。だけど、優花の歩幅に合わせて歩いている。さすが、優花に惚れてる男だ。まぁ、僕もだけど。

「おい、お前ら。遅いぞ!」

会長が、僕達より百メートル位離れた所から怒鳴る。

「遊園地で遊べなくなるじゃないか!!」

会長って…意外に子供だな……。

「はっ、はい!」

優花が元気良く返事をして、早歩きをする。うん。僕達の普段のスピードだ。これなら、すぐに追いつけられる。

「あっ、入り口だよ!」

直樹が叫ぶ。優花の目は、キラキラ輝いていた。……優花の目がキラキラする理由は凄い分かる。相当デカい遊園地だもん。

「藍、藍。大きい遊園地だね!凄いよ」

優花が、僕の服の裾をチョンと掴む。その仕草は、たまらない位に可愛い。この仕草で、何人の男が落ちるか……。

「本当に大きいね。…でも、まずは荷物をホテルに置きに行かないと」

「あっ、そっか!…藍、私の荷物重いからココからは私が持つよ。ありがとう」


ニコニコっと、微笑んで、僕の手と優花の手を優花の荷物の上で重ねた。本当に、この女の子は無意識にこんな事をしてるのか?男が、ドキドキするような事を自然と……。

「だっ……大丈夫。重くないよ。それに、僕は男なんだからさ。これ位大丈夫」

僕は、優花の手を優しく降ろす。優花は、少しの間、考えて。

「……そっか。ありがとう。藍。今度、何かお礼するね」

「じゃあ、今度デートしよ」

………えぇえぇええぇ!?僕、何言ってんの!?アホなの?バカなの?僕って?!何が『じゃあ、今度デートしよ』だよ!!良いよって言われる訳無いじゃ…。

「うん。良いよ」

ほら、良いよって言われ……。………えっ?………は?今『うん。良いよ』……って言った?!

「えっ?良いの?僕で良いの?」

「えっ?だって、出掛けるんでしょう?それで、お礼になるなら大丈夫だし…」

あっ、そっか。優花は、デートの意味を知らないのか……。良かったような、残念なような。複雑な気持ちだな……。

「うん。出掛けるんだ。じゃあ、それが優花からのお礼って事で」

「うん。分かった」
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