愛と情熱の狭間で
「スミレさんの髪って、いつも綺麗だよね~」
「ちょっ…」
一束掬って、私の髪に口づけたレオがニヒルな笑みを浮かべる。
思い出したあの頃となんら変わりない彼に今もなおときめく。
真っ赤であろう私の顔を見つめて、カプッと鼻に齧り付いた。
「痛っ!」
「俺にやきもちをやかせるスミレに丁度いいおしおきだろ」
ミントの香りに包まれて、甘くてほろ苦いキスが降ってきた。
用意周到。ミントガムの味が苦さから甘さに変わっていく。
擦れ合う衣服に、髪に擦れる本の背表紙。
こんな人目につく場所で――。
恥ずかしさから、次第に欲情へと変わる想い。
「やめて…」
言葉だけ拒むかたちの私を見透かして、挑むような目力に囚われる。
「好きだ」
愛と情熱の狭間で揺れ動く乙女ごころ。
今日もまた彼氏には内緒の密会を重ねる――。